業績向上に直結する
「賞与」の仕組みを作ろう!

賞与をめぐる社長のホンネを想像すると、こんな感じでは?

「従業員は、来さえすれば賞与ありと思っているよね。冗談じゃない。利益がなければ出せない。ところが、従業員にとって業績は他人事。せっかく出したのに文句言ってくる奴もいる。『アイツより少ない。評価は?』だってさ。もう、割が合わないよ」

この社長のボヤキ、本当にそうですね。

「従業員に説明できる人事考課の基準があればなあ。利益にこだわる組織に脱皮できればなあ。業界一位の賞与の会社になれればなあ。賞与の後は、ビールで乾杯できればなあ」
という社長のつぶやきが聞こえてくるようです。

そこで社長の労務顧問を自称する北見昌朗は、中小企業にこれはと思う仕組みを考案しました。30分聞けば理解でき、経営にスグ役立ちます。

賞与のココが問題 「給与比例方式」

これは「給与×支給月数×人事評価係数=賞与」という計算方法です。いわゆる「何か月分」というものです。官公庁はこの方式ですし、民間でも大手メーカーはこの方法が主流です。

メリットは、安定しているので、従業員から安心感があることです。

デメリットは、年功序列の色彩が強くなることです。給与が高ければ、賞与も高くなります。仮にA評価が1.1倍、C評価が0.9倍だとします。例えば、こんな二人がいたとします。

給与35万円 × C評価0.9 = 31万5千円
給与25万円 × A評価1.1 = 27万5千円

このように係数を乗じても逆転することはありません。これでは賞与の支給額と現在の貢献度が比例しにくいので、もはや人事評価をする意味さえない。

業績との連動もないので、言ってみれば給与の一部のように”もらって当たり前”になりかねません。

北見昌朗は、社長の労務顧問としてこの方式を提案しません。

賞与のココが問題 「前年実績方式」

これは、前年の金額を見ながら鉛筆を舐める方式で、こんな感じです。

「彼の賞与は前年に30万円だったから、働きが良いので、今年は31万円にしようか?」
「彼女の賞与は前年に25万円だったが、働きがイマイチだから、今年は24万円にしようか?」

メリットは、社長のカンピューターで決められること。

デメリットは、従業員に説明できないこと。だからモチベーションになりにくい。二代目社長にバトンを渡す際には引継ぎが難しい。

この方式は、どちらかと言えば、零細企業に多いやり方です。もちろん北見はお勧めしません。

賞与のココが問題 「ポイント制方式」

これは人事評価の点数を元に分配する方式です。

①人事評価の点数を合計する。
②賞与の総額を、人事評価の合計点数で割って1点単価を出す。
③各人の賞与額を割り出す。

という手順です。

メリットは、一定のファンドを分配するので、業績連動の仕組みになること。

デメリットは、従業員から見てわかりにくく、安心感が低いこと。

お勧めは「給与比例方式+ポイント制方式」の組み合わせ

北見昌朗がお勧めするのは「給与比例方式+ポイント制方式」の組み合わせです。例えば1.5か月分払うとします。その場合は

給与比例方式1か月分 + ポイント比例方式0.5か月分

という感じの構成になります。

メリットは、給与比例方式がベースになっているので、安定性がある。また、ポイント制方式があるので、一定のファンドを分配する業績連動型になること。

デメリットは、ポイント制のウエートが大きいので、評価の低い人は賞与がガタッと下がりかねないこと。それから人事評価のやり方をめぐりギクシャクする可能性もありえます。

考えられる疑問 給与の凸凹

Q 従業員の給与は凸凹があり、なかには年功序列の過去の昇給のせいで異様に高い人もいる。一方では、若い課長のなかには低い給与のままの人もいる。その給与をベースにして賞与を計算するのは違和感があるが、いかがか?

A 賞与を計算する際の基礎となる給与には工夫が必要です。例えば、こんな感じです。
一般従業員の給与は、上限額を設ける。例えば30万円とか。
幹部の給与は、上限を設ける。例えば40万円とか。

考えられる疑問 健康状態に問題ありの人

Q 従業員のなかに健康状態に問題がある人がいる。能力は高いが、休みがちで頼りにならない。こんな場合、どうするのか?

A そういうのを「特別な事情」と言います。それがある場合は、こんな感じで計算します。
給与比例分 + ポイント比例分 - 特別な事情(▲10万円)= 賞与額

考えられる疑問 無駄な残業の多い人

Q 従業員のなかに、残業の多い人がいる。仕事の成果は並なのに、残業時間だけが多い。残業代を稼いでいるのではと勘繰りたくなる。どうやって調整すれば良いか?

A そういうのを「特別な事情」と言います。それがある場合は、こんな感じで計算します。
給与比例分 + ポイント比例分 - 特別な事情(▲10万円)= 賞与額

Q 本人に対しては「残業代が多かったので賞与が下がった」と説明するべきか?

A 「能率が低くいので賞与が下がった」と説明してください。

考えられる疑問 新規開拓に成功した人

Q 営業職のなかに、新規開拓に成功した人がいる。その場合は?

A 「特別な事情」がある場合は、こんな感じで計算します。
給与比例分 + ポイント比例分 + 特別な事情(+10万円)= 賞与額

賞与の相場は?

北見昌朗は、中小企業の賞与の相場を調べました。愛知県下の中小企業231社、18,584人がサンプルです。アンケート調査ではなく実際に支給された賞与です。賞与額は、職位別、性別、年代別に分析していますが、スペースの関係でここでは「30代 男性 一般従業員」および「40代 管理職」を紹介します。年度は平成24年・平成27年・令和元年の3年間です。夏冬合計の年間分です。

新型コロナ感染症で落ち込んだ賞与

次に令和2年の賞与を説明します。令和2年の賞与は、元年と比較して、こんなに落ち込みました。こちらは男女平均のデータです。

今回は、賞与の計算方式を説明しました。次回は査定の行い方を説明します。