厚生年金被保険者の年間賞与額の分布
男性の4割はろくに賞与をもらえなかった
厚生年金の保険料は、平成15年度から賞与でも徴収されるようになった。だから賞与がいくら支給されたのか正確な公的データがある。北見昌朗は、厚生年金事業年報を元に、平成15年度と23年度を比較してみた。このグラフは年間合計の賞与である。
以下は、北見昌朗によるコメントである。
男性の部
まず眼に付くのは、男性で賞与がゼロだった人が急増したことだ。平成15年度は21%だったが、23年度には26%になった。厚生年金に加入している男性は2200万人だから、600万人近い人が賞与ゼロだったことになる。
賞与ゼロの男性とは、どんな人だろうか? これは厚生年金の被保険者だから、週30時間以上の勤務になっている人であり、必ずしも正社員とは限らない。そのなかには、正社員と非正社員が含まれる。600万人というのは膨大な人数だから、正社員も相当含まれているはずだ。また、もちろん非正社員の多くが含まれている。
非正社員になった男性とはどんな人だろうか? 男性なのだから進んでパートタイマーになった人は少ないだろう。正社員を望んだものの就職できず、派遣やパートタイマーになってしまったと想像する。時給で勤務している人が多いから、年収は200万円台が多いと想像できる。いわゆるワーキングプアだ。
賞与が30万円未満だった人は13%いる。これはもはや寸志のレベルだ。この30万円未満とゼロを足すと約4割がろくに賞与をもらえなかったことになる。
一方、賞与が250万円超だった人は5%いて、その比率は変わらない。大手に勤務するエリートは、景気後退があっても、賞与はあまり減っていない。
それから“中間層”といえる「30万円超」はじわじわと減り、それが賞与ゼロへと落ちてしまった。いわゆる中間層の没落である。
女性の部
女性の被保険者は、1000万人から1200万人へと増えた。これは何を意味するのだろうか? 男性の失業や年収ダウンで家計が苦しくなり、それを補うために女性が働きに出たのだろう。イマドキの女性は専業主婦を憧れている人が多いと聞くので、積極的な社会進出というよりも、生活のため、やむを得ずというのが多いのだろう。
だが、女性の多くは非正社員であるために、賞与がゼロの人が33%を占めるまでになっている。
ギクシャクする夫婦・すさんだ社会
これだけ賞与が減ると、家庭にも大きな経済問題を生じさせたはずだ。夫の賞与が減れば、妻の眼も吊り上がってくるだろう。第一生命のサラ川を見ると、こんなものもあった。
ボーナス日 昔円満 今けんか(団塊夫婦)
大不況 私のボーナス 大不評(スマトラ一〇〇)
賞与の袋を申し訳なさそうに渡す夫、封を開けてがっかりする妻、まるで眼に浮かぶようだ。
夫にしてみれば、賞与が減ったのは自分のせいだけではないといいたいところだが、なかなか妻に反論できないものだ。だから自虐的になり、こんな風にぼやいた川柳もある。これなどは、まったく中高年の悲哀を感じさせる。
減っていく…ボーナス・年金 髪・愛情(ピュアレディ)
それでも低いなりに賞与が出ているうちは、まだマシかもしれない。なかには、期待していた賞与がまったく無かった人もいて、こんな川柳もある。
ボーナスは 金額よりも 出る出ない(ハッスル 桃)
ボーナスで 辞めるつもりが 出なかった(のりちゃん)
世の中には、下には下があるもの。賞与が大幅ダウンだった人や、ゼロだった人は、気持ちもふさぎがちだが、それでも会社があるうちは、まだ幸せと自分に言い聞かせた方が良いかもしれない。なかには、こんな川柳もある。
無くなった 冬にボーナス 夏会社(ハローワーカー)
いやはや、まったく笑えない。それにしても、すさんだニッポンになったものである。